FP三宅金蔵のお金の学校

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【相続】戻ってきたスターのお宝

 こんにちわ。FPの金蔵(きんぞう)です。

 少し前ですが、2021年にコロナで亡くなった映画俳優の千葉真一さんの相続手続きがようやく完了したいうニュースがありました。

 お子さんが三人いたそうですが、借金など負債が大きく、財産全体の全容が不明だったため、お二人は<相続放棄>、お一人は<限定承認>を選択したそうです。

 <相続放棄>を選択すると、最初から相続人にならなかったものとみなすという民法の規定があり、プラスの財産も相続できない代わりに、マイナスの財産(負債)からも解放されます。

 残っている財産にどんなものがあるのか不明、多額の借金がある、処分に困る空き家や老朽化したマンションなどを引き継ぎたくないといった場合、有効な手段です。

 ただし、<相続放棄>の場合、プラスもマイナスも含め、全ての財産に関する権利を放棄してしまうため、一部価値のある財産があっても、それを引き継ぐことはできません。

 そこで、役立つのが前述の<限定承認>という制度です。

 <限定承認>では、プラスの財産の範囲内で財産を引き継ぐことができるので、亡くなった方の借金を自分が返す必要はありません。

 例えば、預貯金等1千万円、借金1億円なら、1億円ー1千万円=9千万円の負債は引き継がなくても良いことになります。

 今回の千葉真一さんの相続では、お子さんの一人が<限定承認>を利用したため、全ての財産の権利を放棄することなく、負債返済後に残った千葉さんの遺品がようやく手元に戻ってきたとのこと。

 遺品の中には、貴重な映画のオリジナル・ネガフィルムや米俳優ジャック・ニコルソンとのツーショット写真など、映画ファンにはたまらないお宝が多数あったそうです。

 通常なら、<相続放棄>を選択して、借金から免れたいのが、人間の性でしょうが、父親の遺品を他人の手に渡さないため、<限定承認>を決断されたそうです。

 ちなみに、<相続放棄>は相続人一人一人の判断に基づき、単独で手続きできますが、<限定承認>は相続人全員で行わなければいけません。

 そういった意味では、残されたお子さん3人の仲はそれほど悪くなかったのかもしれませんね。

 相続放棄と限定承認、いづれの手続きも自分が相続人なったことを知ったときから、3か月以内(=熟慮期間内)に行う必要があります。

 ご家族が亡くなられて、死後の手続きに忙殺されていると、あっという間に過ぎてしまいますので、ご注意ください。

 財産の中身が全く分からず、どうしても時間が足りない場合は、熟慮期間の延長を家庭裁判所に申し立てすることもできますので、ぜひ併せてご検討ください。