FP三宅金蔵のお金の学校

お金にジャマされない人生を

日本円では価値をはかれない?

 こんにちわ。FPの金蔵(きんぞう)です。

 突然ですが、お金の重要な役割の一つに、<価値の尺度>というものがあります。

 例えば、スーパーでオレンジジュース一本が150円、350㎖のビール1本が300円で売られていれば、ビール1本は、オレンジジュース2本分の価値があると、誰でも簡単に分かります。 

 また、同じビール1本でも、昨日は300円で売られていたものが、今日360円になっていたら、2割も値上げされたとすぐに知ることができますね。

 このように、お金を通じて、モノやサービスの価値をはかることができるため、人は世の中に存在するモノに何でも値段をつけることで、その価値を知ろうとします。

 ただし、もしその価値をはかるために基準となるお金の価値そのものが変化しているとしたら、どうでしょうか?

 

 昨今、日経平均がついに4万円を超えたとか、春闘で賃上げ率が5%になったとか、日本円を基準にして、景気のいいニュースが飛び交っていますが、その本質的な価値は変化しておらず、<価値の尺度>となる日本円の価値だけが下がっている可能性はないでしょうか?

 つまり、ある時点で1本150円だったりんごジュースが、日本円の価値が半分に下がったために、値段が300円になった場合、それは価値が増加したのではありません。

 単に値札の張り替え作業が行われただけです。

 私がこういった問題意識を持ったのは、米国債券など、昨今の株高とはあまり関係ない金融商品に一部投資しているからです。

 例えば、米国ETF(上場投資信託)である、iシェアーズ・コア 米国総合債券市場 ETF(ティッカー:AGG)の過去1年間の値動き(ドルベース)は以下の通りとなっています。

 

 

 ご覧の通り、昨今の株高とはほぼ無関係に、95ドル前後で横ばいで推移しています。

 しかし、これを東証に上場している、日本円ベースのiシェアーズ 米国総合債券 ETF(ティッカー:2256)で見てみると、以下の通り、全く違った動きになります。 

 

 昨今の円安の影響を受けて、円ベースでの価格は過去1年間で5%近くも上昇していますが、これを<価値の増加>と呼んでもいいのでしょうか?

 むしろ先ほどのりんごジュースの例の通り、単なる値札の張り替え作業ではないでしょうか。

 日本の株式、地価、賃金などは一般的にドルベースでの価値判断がされていないため、こういった分かりやすい比較はできませんが、もしドル表示をすれば、ニュースで騒がれているような大幅な上昇とはほど遠いはずです。

 成功する投資とは、長期間に渡って、本質的な価値が徐々に増加していくものを購入し、じっくり長期保有していくのがセオリーです。

 表示する通貨によって、見せかけの上昇が<演出>されるものに投資すべきではありません。

 

 私が米国ETF(上場投資信託) で、ドル建てのオルカンなどを購入するのも、円建ての日本のオルカン投資信託では分かりづらい価値の変化を見逃さないためです。

 今後、株式や貴金属、地価の上昇など、景気のいいニュースを見られた際は、それが本当の価値の増加なのか、単なる値札の張り替え作業なのか、一度立ち止まって考えてみることをおススメします。