FP三宅金蔵のお金の学校

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【税金】あなたの期待を裏切ります!

 こんにちわ。FPの金蔵(きんぞう)です。

 最近、税務署から巨額の税金を追徴されるニュースがいくつかありましたね。

 『連結納税制度「乱用」を認定 光通信子会社19億円追徴 東京国税局』(時事通信社

 『イニエスタら3選手、計21億円の申告漏れ 国税が「居住者」と判断』(朝日新聞

 それぞれ、数年前に納税した過去分に関して、税務署から申告漏れの指摘を受けたわけですが、かなりの時間が経っていた以上、追徴される方としては、さぞや驚いたでしょう。

 ちなみに、税務署を始め、市役所や警察など、お役所(行政)の仕事全般に共通する原則の一つに、<信義誠実の原則(信義則)>というものがあります。

 簡単に言うと、市民と役所、お互いの信頼関係を重視して、互いになるべく相手の期待を裏切らない様にするというものです。

 つまり、我々一般市民も、納税や各種届け出、交通ルールなど、役所の決めたルールをしっかり守る代わりに、行政側もなるべく我々をビックリさせるようなことをしないでねという訳です。

 今回、税務署から指摘を受けた側も、おそらく税金のプロである、顧問税理士に事前に相談して、オッケーをもらってから、安心して納税していたはずです。

 それが見事に裏切られたわけですから、この信義則の原則が破られた可能性あります。

 尚、過去には納税者の期待を裏切った、もっとひどいケースもありました。

 いわゆる「青色申告課税処分事件(昭和62年)」というものです。

 事件の概要を簡単に説明すると、個人商店である酒屋を経営していた兄弟が、兄の名前で、税務署から青色申告の承認を受けて確定申告していました。

 途中から兄が病気となったため、弟が税務署の承認を受けずに、勝手に自分の名前で確定申告を行っていた訳ですが、税務署もそれに気づかず、何年間も弟の名前で確定申告を受け付けていました。

 何年か経った後、それに気づいた税務署が、承認を受けずに弟の名前で行った青色申告は無効なので、税務上の優遇がない白色申告で納税をやり直せと言ってきたわけです。

 弟にしてみれば、税務署のミスで何年間も申告を受け付けておきながら、今更そんなことを言われても困ると裁判に訴えたわけですが、結局裁判には負けてしまいます。

 その判決の中で、裁判所は、「信義則の原則に基づき、弟の期待に応えることも大切だが、それ以上に納税者間の平等、公平を維持し、納税者の信頼を守ることの方が重要だ」と述べています。

 つまり、いくら税務署側がミスしても、納税者の信頼を守るという大義名分があれば、許されるということですね。

 そういった訳で、今後も、同様のケースで、忘れた頃に税務署から指摘を受けてビックリさせられる人は絶えないでしょう。

 それを変える唯一の方法は、税金を納めるルール(法律)自体を変える事しかありませんが、それができるのは、我々が選挙で代表を選ぶ国会だけです。

 

 国政選挙では、増税や減税といった税金の負担に関することがよく争点になりますが、そもそも税金の徴収ルールについては全く話題にもなりません。

 国民の大多数がサラリーマンであり、源泉徴収で税金を天引きされている内はそうかもしれませんが、今後フリーランスなど、働き方が多様化して、自分自身で税金を納める人が増えれば関心も高まるかもしれません。

 

 個人的には、税務署側に大きな過失があれば、納税者側の過去のミスは問われないといったルール改正が、いつかされることを期待しています。