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【空き家問題】先送りされるワケ

 こんにちわ。FPの金蔵です。

 先日父親の一周忌のため、田舎の実家に戻り、父親から相続した空き家の片づけをしてきました。

 今や全国に一千万戸にも迫る空き家を抱えた当事者として、なぜこの問題が<先送り>されてしてしまうのか、改めてその理由を考えてみました。

 

 理由① 経済的な価値のなさ

 地元の不動産会社に空き家の査定をお願いしましたが、エリア的に人気のないところなのか、かなりの期間返事がないまま放置されました。

 再度お願いして、やっと出てきた数字は、誰でも調べられる固定資産税の評価額そのまま。

 不動産会社も、商売にならない案件には及び腰のようです。

 経済的に価値のある都市部の一等地なら、すぐにでも更地にして、建て直すインセンティブが働きますが、過疎が進む田舎の不動産は処理する動機を誰も見つけられません。

 理由② 処分するモノの多さ

 空き家を相続してから、実家に戻るたびに、少しつづ片づけをしていますが、モノが多すぎます。

 田舎の家は、押し入れや物置など、収納スペースがふんだんにあるので、過去何十年とため込まれた家財が山のように眠っています。

 しかも、すぐにゴミに出せないような壊れた家電、古い大型家具はほんとうに処分に困ります。

 また微妙に高く売れそうな骨董品もなかなか捨てられません。

 多くのケースで空き家問題の当事者は、都市部などの遠方に住んでいるので、貴重な休みを使って、実家に戻り、これら大量の不用品と格闘するにはかなりの時間と費用と気力が必要です。

 理由③ 処分に反対する関係者

 私が相続した空き家は、実は父親が生前住んでいたものではありません。

 亡くなった父親が、実兄から譲り受け、管理していた祖母の家(空き家)です。

 先祖代々何百年も住んでいた場所で、父親の兄弟はその場所に思い入れが相当強いらしく、賃貸に出す事すら、強硬に反対しています。

 母親から聞いた話では、私たちが生きている間はそのまま残して欲しいとのこと。

 最終的に責任を取るつもりはないが、自分たちの思い出のため、処分を先送りして欲しいそうです。

 空き家問題では、こういった田舎の親戚の反対も処分の大きな障害です。

 理由④ 人口減少に伴う過疎化

 今回空き家の片づけをしていたところ、たまたま居合わせたご近所さんと立ち話をすることができました。

 その方曰く、その地区の小学校が、在校生の減少のため、あと数年で遠方の小学校と統廃合されることが決まったとのこと。

 学校のない地域では、ファミリー層は住むことができません。

 過疎化に伴う教育環境の悪化が、さらに空き家の処分を難しくさせています。

 理由⑤ 固定資産税の安さ

 田舎の不動産は、都会と比べて評価が低く、毎年払う固定資産税もそれほどの金額でありません。

 我慢して何とかギリギリ払うことができるのであれば、敢えて苦労して最終決着させるよりは、ダラダラと先延ばしにする方が得策です。

 また、本当は更地にした方が管理や処分がラクなのですが、そうしてしまうと住宅用地の特例が使えなくなり、固定資産税が数倍になってしまうため、家を取り壊す事もできません。

 以上のような理由から、今の日本では、とにかく当事者がこの問題を<先送り>して、放置しておきたくなる現状がいくつもあります。

 私も、田舎から離れて普段生活する都会に戻れば、とりあえず空き家は目に入らないので、問題がなかったことにしたくなります。

 ただし、忘れてはならないことは、放っておけばおくほど、地域の過疎化が進み、ますます問題の解決は困難になるという厳しい現実です。

 空き家問題は、結局のところ、その不動産を引き継いで、所有者となった当事者が、周囲の反対を押し切って、一人で何とかするしかありません。

 

 少子高齢化で地方で毎年大量に空き家が生まれる一方、国は住宅ローン減税を延長して、新築の戸建てやマンションを建てることを大いに推奨しています。

 昨年12月から管理不全空き家への罰則を強化したり、今年4月から、相続した不動産の名義変更を義務化して当事者を苦しめるのとは大きな違いですね。

 同じ税金を使うなら、がんばって空き家問題を解決しようとする当事者へ、所得税の減税や家財処分に補助金を出すなど、今の日本にとって本当に必要な政策を期待したいところです。